United Mountains of the World信仰の対象としてのアドベンチャーツーリズムのグローバルアライアンス
富士山以外にも「○○富士」と名付けられた「あやかり富士」は、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパなどにも多数存在します。海外のあやかり富士は、約40か所に存在しており、海外進出した日本人が自分にゆかりのある土地の山を、親しみを込めて呼んだのが始まりだとされています。
スイス・アルプス山脈のマッターホルンといえば、登山者のあこがれであり、世界のアルピニストの多くが長らく初登頂の誉れを競い合ってきた、高く険しい名峰として有名です。人々は「マッターホルンは悪魔が住んでいる」「亡霊たちの棲家となっている」とまことしやかにささやき、長らく登頂しようとはしませんでした。これらの伝説は、氷河が削り取った険しい岩肌、切り立ったその傾斜を見た人々が、怖れを抱き発生したものと考えられています。霊峰として登山家たちが畏怖の念を抱いた結果、ほかのアルプスの山と比較しても、マッターホルンはごく最近まで制覇されていませんでした。1786年にモンブランが初登頂され、その後アルプス制覇のブームが始まってもなお最後まで残ったのがマッターホルンでした。モンブラン初登頂からおよそ70年後、マッターホルン制覇への挑戦が始まったのです。ようやく1865年7月にエドワード・ウィンパーが初登頂に成功するも、下山中にパーティーの半分が命を落としてしまう悲劇が起きます。ウィンパーがのちに記した書籍の中では「仲間を失った下山後に、上空に十字架の幻影が現れた」と記されるなど、マッターホルンの恐ろしさやミステリアスさを増幅させるエピソードも多く残っています。
霊峰として多くの伝説を残し、畏怖の念を抱かせる名峰・マッターホルン。各地の鋭鋒が「〇〇のマッターホルン」という別名で呼ばれるほど、その存在は大きいものです。これは、わたしたち日本人が、郷土の秀峰を「〇〇富士」と呼ぶ感覚にかなり近いと思いませんか?富士山も、遠くから眺めれば、美しく芸術的な造形。しかし、簡単に登れる山ではなく、頂に近づくにつれ生命が生息できない環境になっていき、植物は枯れ果て岩肌がむき出しになり、山の厳しさや険しい一面を私たちに見せます。また、富士山も数々の伝説や言い伝えの残る山であり、日本の山岳信仰を大きくした霊峰として、世界遺産に登録されるほどの影響力を持っています。
このように、多くの共通点を持ち、それぞれが世界を代表する霊峰であるマッターホルンと富士山。Best of the Fujiでは、この不思議で壮大な因果に着目し、富士山とマッターホルンのあるスイス・ツェルマットとの相互行き来を、Best of the Alpsやスイス政府観光局と相互に推進していくツーリズムを推進していきます。
両国が、お互いの国の名峰やその土地の文化、生活にふれ、その土地の霊峰に力やインスピレーションをもらえるような旅に。
そして、マッターホルンだけでなく、世界各国のあやかり富士と連携し、「こころのふるさと」と称される富士山と、同じく地元の人に「こころのふるさと」ととらえられている世界の山々を通じた経験と交流の旅に。
新型コロナウィルス感染症に打ち勝つための山への信仰を結び付けたグローバルアライアンスにこれからもご期待ください。